能面検事
中山七里著 2018年光文社刊行
初出「小説宝石」(2017年)
- 一 表情のない検察官
- 二 証拠の揃わない容疑者
- 三 数の合わない資料
- 四 威信のない組織
- 五 終わりのない負債
とても魅力的とは言えないけどどこかとても気になる主人公。
能面のような無表情の下にはきっと人情溢れるんだろうなと期待してしまう。
今回はそこまで人情溢れてるわけではないが、続編があるならば徐々に変化していくのではないかという予感がする。
警察内部の不正についてはきっとこういう理由なんだろうなと思う。
悪徳を憎まない警察官は多分いないでしょう。
しかし人間は群れを作った瞬間、組織の論理に縛られます。
結束の固い組織の中にいれば、仲間を護ることが自分を護ることに直結します。
そしてお互いの顔色を窺おうとするあまり、本当に護るべき人たちの顔が見えなくなってくる。
自分を護るために組織を護るということなんだろう。
組織外へ飛び出しても生活の成り立つ個性があれば大丈夫なんだろうけど。
補佐の惣領は魅力的。
教えられていないから対処できなかったのは言い訳かも知れません。
ですが、いったん教えてもらったことは忘れません。
検事から指導されればされるほど、わたしは優秀な戦力になります
と言い切れる強さを備えている。
ぜひ続編を描いて欲しい。
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