ままならないから私とあなた

朝井リョウ著 2016年文藝春秋刊行
初出「オール讀物」(2015年)、「文學界」(2016年)

  • レンタル世界
  • ままならないから私とあなた

両方ともとても良い。
「レンタル世界」については確かにこれを読むまでは自分で人間関係を築けよと思っていたけど、

確かにレンタル業は本物の人間関係じゃないよ。
でも、誰かをレンタルしたことによって、別の誰かとやっと築き始めた本物の人間関係の芽を守れるかもしれないんだよ。

という部分を読んでこういう関係でも今を切り抜けることで未来が拓けるかもと思ってきた。
そして表題作「ままならないから私とあなた」についてはとても胸に突き刺さる。
二人とも両極端ではあるけど、それぞれが正論なのだと思う。
現在、この両極端を結びつけるような仕事をしているわけだが、
もっともっと自分の役割を果たさないといけないと思った。

あなたの今までのやり方は間違ってますよ、とか、あなたのこれまでの努力は無駄だったんですよ、とか、そういうことを言ってるわけじゃないんだよ。ただ、こうすれば今までよりも簡単にできますよ、今後はこういう方法も使えますよってことを教えてるだけ。なのに、すっごく嫌がられるときがあるんだよね。そういう人って、今までのやり方が正しい、って信じて疑ってないの

こういう風に頑張ってきたつもりがいつの間にかこういう風になってしまっているような気がする。
最後の二人の怒涛の激論は何度でも読み返して自分に対して鞭打たないといけない。
この2編より相手を否定するのではなく受け入れた上ですり合わせる力をもっと持ちたいとも思った。
とても良い作品。

ままならないから私とあなた

ままならないから私とあなた

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