アルテーミスの采配

真梨幸子著 2015年幻冬舎刊行 初出「ポンツーン」(2014年〜2015年)加筆・修正

  • プロローグ 女衒
  • 第一部 第一の采配
  • 第二部 第二の采配
  • エピローグ 最後の采配

AV女優の連続不審死が中心のミステリー。
第一部ではAV業界の真実というか、AV女優の本音、闇なんかをドキュメンタリー形式でまとめてある。
第一部で発生した殺人事件の真相を第二部で披露していく形式。
AV女優が自分でその世界を選んだように思わせる“采配”について詳しく描いている。

自分の意思で選択して、そしてその道を自分の足で歩んでいるように見えて、実は、それは誰かの“采配”だったりする。

自分も自分で選択した道を歩んでいるように思っているが、
誰かの“采配”で歩まされているだけなのかもしれない。
それが自分の思いに反して誰かの恨み、妬みなど負の感情に起因する“采配”だったとしたら、
とても恐ろしい道を歩んでいるのではないかと思い怖くて震えてくる。

人間にとって、他者が堕ちるのを見るのが、なにより快楽だからよ。
快楽というのは、つまり、防衛本能の副作用。
他者が堕ちるということは、それだけ、自分を脅かす人が減るということ。
その安堵感が『快楽』に変換される。
だから、自分を支配する可能性がある高い地位にいる人が堕ちると、より快楽が増すようになっている。
人は、自分より下の者がどんなことになろうとそれほど興味を持たないけれど、自分より上の人にはぺこぺこしつつも『堕ちろ』という呪文を忘れない。

という負の感情が恐ろしい。
とても面白い作品だけど、誰が誰だか分からなくなる部分が多いのと、最後の一文の意味が分からないのが少し残念。

アルテーミスの采配

アルテーミスの采配

@2015年@図書館