母性

湊かなえ新潮文庫刊行
2012年単行本(新潮社)、2015年文庫化


第一章 厳粛な時
第ニ章 立像の歌
第三章 嘆き
第四章 ああ 涙でいっぱいのひとよ
第五章 涙の壺
第六章 来るがいい 最後の苦痛よ
終章 愛の歌


単行本でも読んでいるので再読となる。
単行本のときも今ひとつ理解できなかったのだけれど、文庫本になってもよく分からなかった。ただ、文庫本には解説(間室道子・代官山 蔦屋書店 文学担当)があり、この解説を読むと、なんか霧が晴れそうな感じがした。(この解説を読んでからもう一度読むときっと霧が晴れるような予感がするのだけれど、残念ながら読み返す余裕がない...)
“信用出来ない語り手”についての解説は特に納得できる。

とにかく信用できない二人の語り手によるドラマを堪能しよう。
「信用できない語り手」が持つ不安定さは、彼らではなく、
読み手である私たちの常識や正気、弱さ、愛を確認するためのものなのだから。

この“信用出来ない語り手”二人の告白によりこの物語は読み手を不安定な感情を与えているのか!

時は流れる。
流れるからこそ、母への思いも変化する。
それでも愛を求めようとするのが娘であり、
自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、
母性なのではないだろうか。

これが“母性”なのだという。ただ自分が育てられたようにしか育てられないという連鎖もある。母と娘という同性であるがゆえ難しい関係もあるのだろう。悪い連鎖は断ち切り、自分が求めたものを子に与えて欲しいと思う。
とにかく解説がとてもわかり易くて、上手だった。こういう解説を読みたいんだよな〜

母性 (新潮文庫)

母性 (新潮文庫)

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