晩鐘(上)〈新装版〉

乃南アサ著 2015年双葉文庫刊行
2005年文庫版で刊行された同名作品の新装版。
風紋』のその後を描いた作品。『風紋』も長かったけど、これも長い。(上)(中)(下)の3巻構成だし。
『風紋』で起きた殺人事件の被害者家族、加害者家族、新聞記者の7年後となるが、それぞれ事件を引きずっている。良い意味で風化させようとした被害者家族の娘・真裕子の引きずりがメインかと思ったけど、実は新聞記者・建部が一番引きずっているのではないか。その新聞記者が今回発生した殺人事件を契機に加害者家族、被害者家族のその後を記事にすることを決断することがこの巻のメインなのかも。長かった...

もちろん『今』を伝えることの重要性も分かってるつもりですが、
人の人生を、ほんの一瞬だけ輪切りにして、その前もその後のことも見ないっていうんじゃ、
本当は何も見えてこないんじゃないかって。
僕らにとっては一過性のものでも、
当事者たちには、まさしく人生を左右する出来事だったんです。
僕らは、そのことを忘れ過ぎてたんじゃないかと思うんです

三者が「忘れなさい」というのは簡単だけど、当事者はなかなか忘れられるものではない。忘れられない人を無視するのではなく、忘れられない人にも寄り添うことが必要なのかも。
中巻以降も楽しみ!

@2015年@図書館